降参し、連邦準備制度理事会に従って買い入れよう、とシドニーの投資家は言う

連邦準備制度理事会は事実上、大規模かつ広きに渡る金融緩和プログラムでマーケットをコントロールしており、投資家はただ連邦準備制度に沿って取引するのが最も良い、とあるシドニーのファンドマネージャーは木曜日に述べた。

「アメリカのいずれの資産価格についても自由市場原理が成立しているとは言い難いだろう。」と、12月時点で約一千十億オーストラリアドル(700億アメリカドル)を運用しているペンダルグループのヴィマル・ゴー氏は言う。「連邦準備制度理事会が買うと言ったものを事実上買うことになっていて、これは確かに満足のいく資産運用方法ではあるものの、資産を動かすのに全く不十分な方法です。こうした中では、他にやるべきことが何も無い。」と彼は述べた。

ゴー氏の見解は、3月以降の株取引と信用取引に見られる大きな反発は、中央銀行の資産購入と流動的な資本注入プログラムのせいだとする多くの投資家達の考えと一致している。これに対し、パウエル連邦準備制度理事会議長は水曜日、「資産価格を特定の方向に動かすことにはまるで焦点を当てていない。」と、それに代わり直接経済に好影響を与える取り組みに集中していると述べた。

シドニーの資産運用会社で債券、所得、リスクに対する戦略に関し責任者を務めるゴー氏は、ブルームバーグの配信シリーズ「インサイド・トラック」の中で、投資家はハイイールド債を活用すべきだと語った。 連邦準備制度理事会は企業の資金調達支援対策の一環として、コロナパンデミック以前は投資適格であったジャンク債も買い入れた。

「連邦準備制度理事会は、高利回りを目指していることを教えてくれており、投資適格社債ETFを買い入れており、また株式市場の価格を事実上コントロールしている、明らかに債券市場の価格をコントロールしているのだ。」とゴー氏は述べた。

ゴー氏は、「状況が悪化した場合に備えて」、ポジションをリスクヘッジしながら買い入れることを提案した。木曜日に行われた別の配信では、フィデリティ・インターナショナルのポートフォリオ・マネージャーであるジョージ・エフタソプーロス氏は「連邦準備制度理事会と戦わない」ですむ為に、米国株から信用取引への投資にシフトしていると述べた。

最終的には、過去日本でも起きたことと同様に、連邦準備制度理事会の進出拡大によって、国債取引が鈍化する可能性がある、とゴー氏は述べている。「五年も経てば、中央銀行は国債の全てを所有しているだろうから、マーケットにおいて国債は役割があるのかどうかも分からないだろう。財務省が国債を発行して中央銀行がそれを購入するものの取引はされない。まるで日本の様な状況になるだろう。」と彼は話した。

 

【GIU解説】

新型コロナウイルス感染による甚大な影響が見込まれる経済危機を前にして、各国とも経済対策のための財政支出が急増しており、財源は借金である国債発行に頼らざるを得ない。政府が国債を大量に発行し、それを中央銀行が積極的に買い支える動きが広がっている。

日本では、日銀が、国債買い入れの上限を撤廃し、社債やコマーシャルペーパー(CP)の購入枠を拡大する追加の金融緩和政策を決めた。金融市場に大量の資金を供給できる態勢を整えて急激な金利上昇を防ぎ、社債などの購入を通じて新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた企業の資金繰りを支援する。

新型コロナウイルス危機で落ち込んだ経済の回復のためには止むを得ない措置ではあるが、アベノミクスの「異次元金融緩和政策」により日銀は既に大量の国債を買い入れており、国債の発行残高の半分近くを保有する歪んだ構造になっている。買い入れをさらに増やせば、中央銀行が政府の財政赤字を穴埋めする「財政ファイナンス」が心配され、財政規律の緩みを生む問題も生じかねない。コロナ対応はしばらく続くと思われるが、その間で出口戦略(国債保有額の削減)をどのように描くかも注視していく必要がある。

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