仕事と家庭との境界であったオフィスという存在、過去の遺物となるか・・・

実は職場とは知らずに自身の人格向上につながっていたのだ。

予測される未来図において、オフィスというものはかもしれない。グ₋グルとフェイスブックは、従業員達に2021年までリモ₋トワ₋クをしても良いと告げた。ツイッタ₋は在宅勤務を「永久に」許可する。いくつもの大銀行はマンハッタンのオフィスタワ₋をかつてのように人で一杯にしようとは考えていない。先週、同僚の記者がハルステッド不動産の最高経営責任者に単刀直入に質問をした₋「今後、オフィスに人が集まるでしょうか?」

彼は、「頭がおかしいと言われるかもしれないが、それでも私は答えを“はい”とした。今日や明日ではなく、いつの日かだが。」

今後数ヶ月の間で、今までのキャリアの大部分をオフィスで過ごした人々は、オフィスを恋しいと思うようになっていくのではないか。具体的には何が恋しくなるのか?一つは仲間意識だ。某テレビドラマでもお馴染みのアイデアであるが、オフィスというものが社会的な基礎になっているのだということは明らかであり、ギャラップ社の調査いわく、例えば外で働く女性の3分の2は、仕事の「社会的側面」が毎日オフィスに顔を出す「主な理由」だと答えている。

社会学者のロバート・パットナム氏による、記憶に残る分類分けを行うならば、人々がまだマッシャ₋(※アクティブに様々な社会的イベントに参加して行く人々)ではなくシュムーザー(※非社会的生活を送る人)であるとき、新社会人としての移行期にある人々にとってオフィスは重要かつ幸せをもたらす役割を果たすという意見もある。

そして、オフィスは実際結婚相手を見つけるのに最適な場所である。サウスウエスト航空は二十一年来、2万6900人の従業員中実に1600人以上が社内結婚をしたことを公表した。オフィス生活へのメリットになるものというのは単なる社交性だけではなく、知性でもある。オフィスがなければ偶然な出会いのチャンスを逃してしまうし、最高のアイデアを生み出すのはまさに喜びに満ち溢れている婚約時であるかに等しい。

何年も前に、生産性の哲学者であり作家のアダム・グラント氏は、3Mの化学者であるスペンサー・シルバー氏がオフィス内とその周辺で低粘着性の接着剤を宣伝するために何年も費やしては無駄に過ごしていることを指摘していました。しかし、教会に通う同僚のアート・フライ氏は、彼のプレゼンテーションの1つを見て、付箋が彼の賛美歌のしおり代わりとして最適であることに気づきました。こうやってポストイットは日の目をみたのです。

これについて考えるもう1つの点があり、それはオフィスではなく自宅で仕事をすることは、適切な書店ではなく、アマゾンで買い物をするようなものだということです。書店では、何が見つかるかわからない。間違った通路を歩き回り、つまずくまでは、わからないことを知ることさえできません。

人間は、相互作用がない時にどうなるのか?何もリアクションが無いことが何を意味するのか、そしてそれは大体が否定的なものである。そして不安や誤解、あらゆる混乱をもたらすのだ。「同僚と気楽な関係性を築くには時間が必要。知らぬ人達となら尚更だ。」とウォートン大学経営学科の教授であるナンシー・ロスバード氏は語った。彼女は、権力の違いもまた、ことを複雑にしていると付言した。ロスバード氏の研究文献によると、上司からのメール返信が遅かった場合、部下は上司が何か他の重要なことに対応しているのだと思い込む。しかし我々部下が遅い返信をした場合は、上司は我々が怠けているか決定に対し意見がないのだと信じ込むのだ。より幅広い意味では、オフィスがあろうとなかろうと会社では政治が行われている。実際に同僚の姿を見ることができればそれだけで、実権力は何処にあるのか、ビジネスはどのように行われているのか、親切な人は誰なのかを見極められるのだ。

ところで、オフィスで働くということの最も深層にある効果は、おそらく私たちの自己意識に関係しているのではないだろうか。子供が残したご飯をつまみながらタイピングしていたって、コラムニストになった気分をどう感じられるだろうか?いくらかは、確かに感じる。でも毎朝、おめかししてタイムズビルに入れば、もっと気分は上がるだろう。

仕事をしている自分と家庭で過ごす自分の切り替えについて研究しているロスバード氏は、こうした混乱はよくあることだと述べた。切り替えが無くしても気にならない「統合タイプ」と、そもそもそうした切り替えをしない「区別タイプ」がいると彼女は言う。このコロナパンデミックによる状況は「区別タイプにとっては地獄だ」と言う。

しかし、オフィスが無くなったら一番困るのは若い人々だとも言う。オフィスというのはしばしば、人格が形成される場でもあって、教会での伝統的な婚約が減少し、結婚や出産が先延ばしにされている時代においては特に価値のあるものだ。

残念ながら、現在のテクノロジー進化はもう仕事と家庭の境界を崩している。少なくともオフィスは、仕事と家庭の間にしっかりとした境界を張っていたのだ。しかし、それも過去の遺物となりかねない。

 

【GIU解説】

「統合タイプ」と「個別タイプ」がいるとのこと。非常に良く理解できる。フリーランスは統合タイプの代表格ともいえるのでしょう。在宅で効率良く仕事をしていた人々は今後どう動くのか。当然ながら、フリーランスの人々にも有能な人間はたくさんいる。これまでは、結婚や諸事情を機にフリーランスに転身した人が多くを占める業界であった。福利厚生や賞与は得られず、フルタイムで働いたとしても派遣社員と同程度と言って良い賃金で働いている。しかし、大企業が永久在宅を認めだしたら、多くが就職活動を始めるのではないでしょうか。統合タイプにとっては、状況や自身を注視し、より多くの報酬を得られる方法を見つける絶好の機会ともとれる。いずれにしても自身がどちらのタイプに属するのか、見つめるべきであろう。コロナ危機により大規模なリストラを検討している企業が後を絶たない今、自身が個別タイプであると自覚するならば、必ず出勤をせざるを得ない職業につかねばならない。医療従事者、救命救急士、消防士、設備士、警備員、管理人、接客業といった種類となるのでしょうか。コロナ危機が危機のみにならずに終息させなければならないのは間違いない。

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