オーストラリア政府、9400万ドル分原油購入―経済を学ぶ学生の資料にもなる

先週オーストラリア政府はアメリカから9400万ドル分の原油購入をしたが、この出来事は貯蔵型燃料と再生型燃料の違いを学びたい経済学部の大学生にぴったりの学習事例かもしれない。

その後に必ず輸送や燃料システムを学ぶことになり、それらの勉強にも役立つでしょう。

先週、オーストラリアは現在の記録的な原油安をきっかけに米国から原油を購入しました。

原油はガソリン、ディーゼル、LPG、ジェット燃料等に変わる原材料となります。

燃油安全保障に関わる国際規定上では、世界各国は90日分の原油を緊急時用として貯蔵することになっているが、オーストラリアは何年にもわたってその規則を不履行にしていた。

計算では、オーストラリアの原油貯蔵量は2月末で56日分。海上運搬中にあるものも含めた場合は81日分であった。モリソン政府による9400万ドル分の原油購入で、更に4、5日分の緊急用の原油を確保でき、90日分という基準値に近づいた。

貯蔵型燃料である原油は、物理的に貯蔵場所が必要になります。

しかしながら、オーストラリアは十分な貯蔵施設がないため、国外(この場合米国をさす)で施設を借りなければならないのです。

それはつまり緊急時において、その原油をオーストラリアへ輸送するのに数週間かかることになります。

 

貯蔵再生の違いとは

ここでは貯蔵型燃料と再生型燃料の違いを説明します。

貯蔵型燃料は、限られた供給で輸送して保管することができますが、一度しか使用できず、補充することはできません(時間尺度的にみると)。

貯蔵型燃料は、石油、石炭、ガス、ウランなどといった有機燃料は、貯蔵型燃料の例だ。

再生型燃料とは一方で、継続的で安定した流れで枯渇することがなく、つまり常に新しいものが無限に供給できます。

再生型燃料源の多くは風力発電や太陽光発電など環境が生み出すものです。

再生型燃料はほとんどの場所で生産出来、分散型の燃料生産・消費に適している。

例えば、再生型燃料で充電できるリチウムイオン電池を搭載した車は、他国からオーストラリアへと原油が運ばれてくるのを待つ必要がなく走行できるのです。

屋上での太陽光発電や充電設備が備わっている住宅は、全てとはいわないまでも多くの電力を自宅で自給できます。そのため石炭が掘り起こされ、発電所に運ばれ、燃料に変えられ、自宅への供給を待つ必要がないのです。

充電設備は、再生型燃料を(一種の)貯蔵型燃料に変換することができるのです。

現在、西オーストラリア州政府は、屋上での太陽光発電技術はありますが、それを貯めておく充電設備の購入が困難な家庭向けに、いくつかの「公共充電技術」を試験的に導入しています。

テスラ社が開発したこの公共充電技術を使うと、1日2ドル以下で、屋上の太陽光発電で自給された余剰電力を一時的に貯蔵し、夜間利用へ移行することもできるようになります。

 

石油産業の現在の問題点

現在、石油業界を襲っているのは、貯蔵型燃料の供給過剰による危機なのです。

世界の石油産業について言えば、生産する石油の貯蔵能力というものは限界があります。

世界経済が正常に機能していれば、通常は問題にならないことですが、コロナウイルス拡大を止めるために様々な国でロックダウン(都市封鎖)を実施してしまったために、石油需要がかつてないほどまでに落ち込んでしまったため、需要と供給で隔たりが生じてしまったのですが。

油田というものは、需要に合わせて稼働させたり停止させたりすることは出来ないのです。

これは現在私たちが目前にしている大問題なのです。

需要が減少し、世界中の石油産業は、増え続ける不要な原油の貯蔵問題と、貯蔵場所をいかに確保するかという問題に局面しています。

そしてそれが原油価格の下落につながります。

つまり物価とは需要によって決定される傾向にあるため、現在石油の価値は劇的に急落しているのです。

 

【GIU解説】

原油価格の指標となる米国産WTI原油の先物価格は米ニューヨーク市場で前週末比25%急落して1バレル=12.78ドルで取引を終えました。

前週20日につけたマイナス価格からは持ち直したものの、アジア通貨危機があった1990年代末と同レベルの安値。

石油依存度が高い産油国経済も揺さぶられます。当然ながら産油国も財政不安となります。

このままだと借金のない一握りの企業しか生き残れないでしょう。破綻が相次げば、社債を保有するファンドや、ローンを貸し付けている金融機関の経営に危機が及びかねない。金融システムまで揺らぐ事態になれば、すでにリーマン・ショック以上とみられている経済危機が、さらに深刻化することとなるでしょう。

(原油取引価格:4月30日時点1BBL/24.41USD)

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