ホテルグループは関連企業の数千万ドルの融資を返却する予定

給与保護プログラム(Paycheck Protection Program[略称:PPP] ※ アメリカの中小企業救済支援ローン)で少なくとも7000万ドルを受け取り、厳重監視を受けているアッシュフォード社は融資を返済する予定だと述べた。

政府の中小企業融資プログラムの最大の受益者の一社である同社は土曜日に、給与保護プログラムを通して受け取った融資のうち、少なくとも7000万ドルを返すと述べた。

ホテルやリゾートの関連グループを統括しているアッシュフォード社は、関連企業が1億2600万ドルの融資を申請するのを許可した。また同社は以前、関連企業が受け取った額は返済せずに取っておくつもりだと述べていた。

しかし、5月2日土曜日に資金提供を受けられる対象を制限する中小企業庁の新しいガイドラインを引用した上で、アッシュフォード社は融資を返却すると発表した。この決定の前、ニューヨーク・タイムズ紙を含む各メディアは、コロナウイルス流行の最中で労働者の給与を捻出するのに苦労している中小企業支援用の融資プログラムから、アッシュフォード社がどの程度支援を受けていたかを詳細に報じていた。

トランプ政権は、アッシュフォード社のような企業や他の上場企業が6600億ドルの融資を受けていることが明らかになった後、支援プログラムの規則を厳格化することに努めていた。

先週、スティーブン・ムニューチン財務長官は、5月7日迄の間企業からの自主返済を受け付けるとし、その後は支援プログラムの基準を満たしていない企業に対し「刑事責任」が問われうると告げた。同氏は、アメリカ政府は200万ドル以上の融資を受けた企業を監査していくと述べた。

アッシュフォード社とその関連企業が申請した莫大な金額は、他の有名企業よりも多く、議員達の注目を引いた。 ニューヨークの民主党員で少数派政党の党首であるチャック・シューマー上院議員は、同社の融資について調査を求めており、今年の大統領選で民主党候補となるジョー・バイデン氏はツイッターで、同社はお金を返すべきだと書き込んでいた。

アッシュフォード社と関連企業は土曜日、政府が決めた5月7日の期限までに返済すると発表した。これは4月30日の、企業は無制限の資金提供を受けるべきではないとしたものを含む中小企業庁のルール変更を受け、自社グループが融資を受ける資格があるかどうかの考えが揺らいだことによるものだという。

「当社の申請書が提出された時点で成立していた法律やその規則に基づいて、当社が給与保護プログラムを受ける資格があると信じていたし基本的には現在も考えは変わらない」と同社は声名の中で告げたが「中小企業庁のルール変更や行政当局の意見変化が続く中で、当社はもはや融資対象になるべきではないとの結論に至った」と述べた。

同社は、ドライクリーニング、レストラン、ネイルサロンといった小規模企業が、コロナウイルス対策のロックダウンの中でも従業員に支払いを続けられるようサポートを目的とした資金提供を受けたため、多くの人々からの怒りをかったいくつかの大企業のうちの一つだった。アッシュフォード社が融資を受け取れるかどうかが大きな問題点としてあがったのは、融資プログラムが当初の予算の3490億ドルをすぐに使い果たしてしまい、資金の無返済が長期にわたって続き多くの小さな企業が支援を受けられないままになったことによる。議会はその後、更に3100億ドルを融資プログラムに追加で割り当てたが、その資金もすぐに使い切ると予想されている。

アッシュフォード社は声明の中で「この融資プログラムのための議会の予算割り当てが、同様の被害を受けたアメリカ国内の全企業を補償するには不十分だったことを事前に知る由は無かった」と述べている。

アッシュフォード社を率いるモンティ・ベネット氏(写真)は、2016年のトランプ現大統領の選挙運動を支援し、これまでに15万ドル以上を同氏の再選候補に直接提供するなど、共和党に多額の寄付をしてきた保守派である。彼はグループ経営をしているホテルやレストラン向けのロビー活動(特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動)に参加していた。そのロビー活動は「物理的に一箇所で」500人に満たない従業員を雇用している場合は、グループ会社の関連企業がそれぞれ個別に財産支援を申請できるようにするため、カーブアウト(企業が事業部門の一部や関連企業を切り離し、ベンチャー企業として独立させ、収益の改善や事業の成長を図る経営戦略)を目的としたものであった。

シェイク・シャックグループやロサンゼルス・レイカーズグループのような他の組織が資金を返すと発表している一方で、モンティ・ベネット氏とその関連会社は資金を手元に置いておこうと決めていた。ベネット氏は旅行者の休暇や出張キャンセルが相次ぎ、ウイルスの影響で大打撃を受けている接客業界に対して、政府からの救済策が他には無いと訴えていた。

「我々は、議会、財務省、連邦準備制度理事会に対して、パンデミックとそれに対する政府の対策の結果として弱ったホテル業界へ、雇用を確保して資産価値を保護するため支援をするよう求めている」とベネット氏は声明の中で述べた。

ベネット氏が率いる接客業一大グループ企業は、ロビー活動で意図的な活路を作っておいたお陰で、融資プログラムの対象となれたいくつかの大企業の一つである。アッシュフォード社は声明で「活路」という考えに反論した。

そして「議会は、接客業界の経済的崩壊を防ぐための手段として、複数のホテルを所有している企業が、ホテルごとに融資を受けられるようにするために、特別に給与保護プログラムを設計した」と説明している。

 

【GIU解説】

給与保護プログラム(PPP)から資金を受け取った中には下記の企業がある。

シェイクシャック(レストラン店展開企業)/Veritone(人工知能開発企業)/Aquestive Therapeutics(製薬企業)/Potbelly(サンドイッチ店展開企業)/ルース・クリス・ステーキハウス(ステーキハウス展開企業)―これらの最高責任者は年間100万ドル以上の報酬を受け取っている。

従業員への賃金の補填を行う為の申請であることは間違いであろうが、最高責任者が自身の報酬を如何にしているのかは定かではない。そうなれば民間人から是々非々が唱えられる。

愛媛県知事のように全額返納してから声明を行う方が倫理的にも好感が持てるし、人間力が問われるところであろう。

上院はPPPに3200億ドルを追加する法案を可決した。中小企業向けの資金となり、真に死活問題と局面している世帯に給付されることを望むし、米国のソーシャルセキュリティナンバー(社会保障番号≒マイナンバーカード)は本来であればPPPのような補償制度のために存在するのだから、その目的を果たしてくれることを願う。

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